ゲームにおいて面白さというのはシステムの完成度、そしてプレイヤー同士の干渉、差し合いが絶妙なバランスでできることが大切だ、と前作を制作しているときは思っていました。これは間違いないことだと思います.
 
故に、ダンジョンにはもぐらないっ、ではプレイヤー間の干渉をメインにシステムデザインを行いました。しかしβ版でテストプレイをしていた時に数字が大きくなる、前に進む、ということが予想以上にゲームの楽しみという部分で比重を占めているということに気づいたのです。
 
β版のゲームにおいては1ラウンドにアイテムを複数購入すると価格が上昇し、足元を見られる、というシステムが設定されていました。
目的としては、多数販売したプレイヤーは所持金額が加速して寡占やその他の戦術が取りやすくなり、有利になる。しかしアイテムをたくさん購入する必要があり、そこに重しを乗せておけば差が離れすぎないだろう、という点。そしてアイテムが売れなくて負けが込んでいるプレイヤーは前ラウンドの在庫が残っており、1ラウンドに複数購入する必要がなく、価格上昇のデメリットをあまり受けないだろう、という発想から生まれました。
 
これは製品版の前の段階で削除されたのですが、このシステムがどう悪かったのか、というと、ゲームをしているのに一歩も前に進まない、という状況が起こるということでした。
この追徴課税システムのせいでプレイヤーは合計4金で勝ったアイテムを5金で売る、といったような目にあうことが多々あったのです。10分かけ、悩み、相手の思考を読んでつけた価格の結果が1金。これはあまりにも行ったことに対する対価が見合っていません。
ハイリソースローリターンというゲームシステムだったのです。
 
Wizard of Coastのマークローズウォーターも言っていましたが、システムが完璧で動作するのとプレイヤーがそれを面白いと思うかは別なのです。
(加えてこの追徴課税のシステムは完璧でもなんでもなく、1金で裏向き冒険者を見てロマン7金をして抜け駆けギャンブルを行い、成功すれば勝利手前、という真面目に戦略を組んだプレイヤーが莫迦を見かねない穴を持っていたのですが)
苦しすぎるゲームはゲームではありません。苦行です。プレイヤーは自分ができることが増えること、数字が大きくなり、勝利へとちゃんと近づいていることも大きな楽しみを見出すのです。追徴課税ありのシステムの時はその時はその時の戦術や価格設定スタイルがあり、プレイヤー感の刺し合いという楽しみは同じように確立されていましたがこの部分が足りなかったのです。

この鎖を解き放ってようやくダンジョンにはもぐらないっ!は面白い、と言ってもらえるゲームになったと思います。某ゲーム会に一時β版をテストプレイとして持ち込み、遊んでいただいたことがあるのですが、この部分のせいで印象が悪くなっているのを見て取ることができました。
ゲームマーケットではその経験が少し心の底に残っており、恥ずかしながら自身のゲームを自身でインストすることに恐れがあったのも確かです。皆さんが楽しんでプレイしてくださっている様子を見た時、ようやっとそれは晴れました。

というのがちょっとしたやらかしのお話し。ゲームはプレイヤーがシステムに遊ばれるものではなく、プレイヤーがシステムで遊んで気持ちよくなるものだからそこまで押さえつけるなヨ!というのが総括ですかね。自身の反省を込めてここにこうして記事を載せさせていただきました。

余談ですが、ゲムマ春に持ち込もうとしているテストプレイ卓用のゲームのα版を制作しているときもカードパワーを低く設定してしまい「辛すぎて妨害する余裕もない。そのせいでシステムはいいのにインタラクティブさがまったくないしもはや苦行」といったようなお言葉をいただきました。毎回ずばっといってくれるレベルデザイン部の皆さん、本当にありがとうございます。面と向かっていうのは恥ずかしいのでここで謝辞を述べさせていただきます。

自分で作ってて思うんですけど、カードがOPOP&OPすぎて崩壊しているゲームとかをよく目にしているせいで俺は絶対にクソ環境にしねぇええええ!と思って逆に低パワーのクソ環境を作ってることが多いんですよね……。
他の人はどうなんすかね?OPなカード作ってやべぇNerfしよ、ってなる場合のほうが多いのかな?それとも自分と同じタイプが多いのかな?